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vol,5~直感~

教室の準備をするより早く、考えていたことがありました。それは、準備の段階から、私ひとりでするのではなく、誰かに手伝ってもらおうということでした。
 主人に教室を開きたいという話を申し出たとき、主人はまじまじと私の顔を見て、「お前が教室を開いて、誰がくるんだ?生徒が一人でも、二人でも来ればいいほうじゃないか?」と言いました。全くその通りでした。

十数年前の当時は、七田教育なんてほとんど誰も知りませんでした。「右脳」という言葉自体、知られていませんでした。ですから、無名の教育を無名の私がやっても生徒の集まる見込みは、非常に低かったのです。それでも一人でやらず、赤字覚悟で誰かに手伝ってもらおうと思ったのは、私が自分の能力をよく知っていたからです。私は、残念ながら、自分が実務能力に欠けることを知っていました。

字は汚いし、不器用で、教材ひとつ上手には作れないのです。だから、誰かに準備段階から手伝ってもらおうと考えたのでした。そして、その時、後にも先にもたった一人だけ候補に浮かんだ人が、林先生でした。それはまさに、直感でした。

  私と林先生は、OL時代に同じ係りに配属された同期生でした。しかし、二人は取り立てて仲が良かったわけではなく、反発しあうこともしばしばでした。林先生は、そのうち部長秘書に抜擢されて係りを移り、在職中も顔を合わせても挨拶する程度でした。私が退職してからは、まったく没交渉になっていて、すでに十年くらいたっていました。今でも、たくさんの知人の中からどうして頼むなら林先生しかいないって考えたのか不思議です。もちろん、彼女の人柄の温かさ、ユニークでユーモアにあふれたところ、のびのびしたとても良い字を書くこと、イラストが上手なこと、ポリーシーを持った生き方をする人であることなど、冷静に考えたのも事実です。

私は、十年近くも連絡を取っていない林先生に、どうやって、この話を持ちかけようか。(私に、いい印象もっていなさそうだしなぁ・・・)彼女がもう、いい仕事についていたらどうしよう・・・。そんな不安をめぐらせていました。運良くその年の夏、OL時代の係りの同窓会があり、林先生も来ることは予想がついていました。このチャンスを逃したら、林先生を誘うきっかけはないと、私は、てぐすねを引いて、今か今かと玄関で待っていました。

(そんなときに限って、林先生は、最後に到着。)やっと来た!と思ったのに林先生は、なんと私を避けるように遠回りして、サッサとお部屋のほうに行ってしまうではありませんか!後で聞いた話ですが、あまりに鬼気迫る私の様子に、思わず身の危険を感じて(?)逃げたのだそうです。

そんな林先生との始まりでしたが、気がつけば12年以上も一緒の時間を共有しています。林先生の、優しさ、人柄の温かさは彼女の担任を経験した人なら、子供でもお母様でも誰でも知っていると思います。でも、本当にその優しさに救われ、彼女のことを誰よりも尊敬しているのは、他ならぬこの私だと自負しています。付き合えば付き合うほど信頼でき、尊敬できる人に出会え、パートナーとして共に歩むことのできたことは、私の人生において、とても大きな宝物だと思っています。

右脳には、大量記憶、高速計算処理能力、絶対音感,ESP能力等など、さまざまな素晴らしい能力があります。そんな中で私は、本当にすごいのは、「直観力」だと思っています。人生の岐路において誰にも答えが分からないけれど、重要な選択をしなければならない。そんな時が誰にでも、必ず何度か来るでしょう。その時、直感で最良の選択ができたならどれほど、その人生は開けていくでしょう。経営者としての能力で必要なのものとして、一流の経営者の多くが挙げたものは、「直観力」でした。そして、今にして思えば、開校前に私は、そんな選択をし、それがどんなに素晴らしいことかを今、実感しているのです。


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